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コロナ禍における沖縄文化芸能の現状調査アンケート[結果]

2021.09.29
  • お知らせ
コロナ禍における沖縄文化芸能の現状調査アンケート[結果]

過日、沖縄の文化芸能芸術に携わる皆さまから回答をお寄せいただきました「コロナ禍における沖縄文化芸能の現状調査アンケート」につきまして、集計結果を発表いたします。

今回のアンケートは質問が多岐にわたり、かつ少々複雑であったため、集計に時間がかかり、発表が遅れましたことをお詫び申し上げます。また、統計学的に見れば不備もあるかと思いますが、皆さまからお寄せいただいた回答の中に込められた思いは、概ねあぶり出せたのではないかと思います。

今後はこの集計結果を踏まえ、新型コロナウイルス第6波の先を見据えた、具体的な支援策の実現につなげていきたいと考えております。アンケート結果をご覧いただいてのご意見・ご感想等ございましたら、info@oein.jp まで、ぜひお寄せいただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

実施団体:
NPO法人 沖縄イベント情報ネットワーク(箆柄暦)
公益財団法人 みらいファンド沖縄

 

コロナ禍における沖縄文化芸能の現状調査アンケート[結果]

実施期間:2021.6.10~2021.6.30
実施方法:アンケートフォーム
実施対象:沖縄県内外で文化・芸能・芸術活動を行っている、パフォーマー、スタッフ、イベント施設

実施母体
NPO法人 沖縄イベント情報ネットワーク(箆柄暦)
https://www.piratsuka.com/
公益財団法人 みらいファンド沖縄
https://miraifund.org/

実施目的
コロナ禍が続く中、沖縄の文化芸能活動に携わる方々は「現在どのような現状にあり、どんなことで困っているのか」を調査するため。また、その結果を沖縄県や市町村等の行政機関、および新聞等の県内メディアに提示して、補助金や基金など「文化芸能活動を続けるために必要な具体的支援」の立ち上げにつなげていくため。

実施背景:
日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大が進み、イベントの開催に影響が出始めてから1年以上が経過した。これまで沖縄イベント情報ネットワーク・箆柄暦では、沖縄のイベント情報を収集・整理・発信する活動を通じて、沖縄の文化や芸能に携わる皆さまの活動を微力ながらお手伝いしてきたが、現在はコロナ禍でイベント自体が激減しており、それもままならない状態となっている。

そこで私たちは「情報発信以外にも何かできることはないか」と考え、本調査の実施を企画した。

調査結果の分析および提言は、公益財団法人 みらいファンド沖縄と共同で行った。みらいファンド沖縄は、地域の困りごとを解決するために基金を作り、個人や企業からの寄付金を届けたり、市民活動への助成を行う行政や企業に対し、助成プログラムの開発支援・協力などを行っている団体である。

沖縄の文化芸能活動に携わる方々にとって、今、そしてこれから「本当に必要な支援」とはどのようなものなのか。
本アンケートを通じて「現場の声」を集め、行政機関やメディアに働きかけ、具体的な支援策につなげることを目指す。

 

●アンケート回答数
・パフォーマー編 146件 県内118件 県外28件
・スタッフ編   57件 県内51件 県外6件
・イベント施設編 34件 県内30件 県外4件


●アンケート結果

集計は、アンケート設問ごとに結果を集計したものです。
解析は、設問ごとに集計した上で、複数要素で集計したりコメントを加えたものです。

[アンケート集計(PDF)]
・パフォーマー編 県内][県外]
・スタッフ編   [県内]
・イベント施設編 [県内]

[アンケート解析(PDF)]
・パフォーマー編 [県内][県外]
・スタッフ編   [県内]
・イベント施設編 [県内]
※スタッフ編、イベント施設編の県外データは、件数が少なかったためデータ化はせず、解析の際の参考とさせていただきました。

[自由記入欄(PDF)]
イベント全般についてと、配信についての自由記入欄の内容をまとめたものです。
[イベント][配信]

 

●アンケートを経て見えてきたもの

アンケートの集計、解析を進めるなかで、以下のような課題が見えてきました。

●「芸能の島」とは何だったのか?
これまで沖縄の文化・芸能・芸術に関わる人達(以下、芸能従事者)は、「沖縄は文化立県」「芸能の島」「独自の文化は観光資源」と言われる中で、その一端を担う自負を持って活動してきた。しかしコロナ禍では、芸能従事者に対する沖縄県独自のサポートが充分に行われておらず、パフォーマー、スタッフ、イベント施設のすべてから多くの失望の声が寄せられている。この失望感は、アンケート全体を通して伝わってくる。

●給付型サポートの難しさ
芸能従事者に向けた一括給付型の支援を望む声が多かった。しかし、芸能従事者とそれ以外の人を明確に定義することは難しく、また支援対象が特定できたとしても、個々の芸能従事者の活動状況に合わせた給付を行ううえで必要な「客観的な基準」を策定することも難しい。
今後は、各自の
普段の活動状況をデータ化し、有事の際に速やかにサポートが受けられるような「客観的な基準作り」が必要なのではないか。そのような基準があれば、コロナ禍が沈静化したのちの平時においても、活動に応じた支援を行うことが可能になる。

●補助金や事業支援の活用の難しさ
スタッフやイベント施設では、行政等による補助金や支援メニューを活用しているところも多いが、パフォーマーではあまり活用されていない。その理由の多くは、「支援制度を見つけることができなかった」「事務手続きが難しく諦めた」というものだった。活用したスタッフやイベント施設においても、申請や手続きにはハードルの高さを感じている様子がうかがえる。支援が必要な人にその情報を確実に行き渡らせ、事務処理の負担を減らすことのできるサポートが必要ではないか。

●ダメージの大きさの違いを把握した上でのケア
芸能従事者の中でも特に、芸能を専業として活躍してきたの人のダメージは、財政的にも技術的にも最も大きい。また、専業でも実演のみを行っている人と、実演以外に生徒へのレッスンなども行っている人とでは、ダメージの度合いが違ってくる。
また、兼業(芸能以外に主たる職業を持つ人)の場合、金銭的なダメージよりも、実演の機会が失われたことによる技術的・精神的なダメージが大きい。こういったダメージの度合いや違いを把握した上でのケアが必要ではないか。

●イベント施設が運営を続けるための具体的なサポート
イベント施設は「コロナ禍でもなんとか公演を行いたい」という気持ちで運営を続けている。そのため、休業を前提とした要請とその補償よりも、むしろ「どのような基準をクリアすれば稼働可能なのか」という、営業を行う上での明確な指針を求めている。まずはその基準をきちんと策定するとともに、基準を満たすための設備整備や検査キット購入に対する補助、さらに基準を満たしていても感染が起きてしまった場合の補償や医療連携などが明確になれば、イベント施設も安心して稼働できるのではないか。
施設が活動を閉じてしまうと実演の機会が奪われてしまうため、イベント施設の支援は非常に重要と思われる。

●公共施設の対応改善
公共施設においても、イベントの開催が許される環境整備と維持に対する補助に加えて、入場者数の制限があった場合に使用料の割引を行う制度や、施設閉鎖にともなう公演中止の補償など、芸能従事者が発表の場として安心して使えるための対応が求められる。そのためには、施設を管轄する行政の支援が欠かせない。
また、コロナ禍で配信ライブが急増しているが、県内の公共施設では利用者が使用可能な光回線を用意していないところも多い。この機会に、基本的な配信環境を整備することも必要ではないか。
さらに現在、多くの公共施設が公式サイトを持たず、公演情報の発信も十分には行われていない。ここも今後ぜひ改善されるべきと考える。

●一個の働く者として
「芸能の島沖縄」とは言われてきたが、実際のところ、文化・芸能・芸術に関わる人達、そしてその脇を固める人達のことを、沖縄の行政は、経済界は、そして県民はどう思っているのだろうか。回答の中には「芸能従事者達が以前から漠然と感じていた問題はすでにそこに在り、コロナ禍はそれを露わにしただけではないのか」という声も多かった。ならばこれを機に、芸能従事者も他の職業人と同様、一個の働く者として、安心して経済活動が行える環境が整えられなければならない。本アンケートがその切っ掛けとなればと考える。

以上 2021/9/30