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箆柄暦『六・七月の沖縄』舞台『グスーヨー! 32軍壕へメンソーレ』2026年版

2026.06.03
  • インタビュー
箆柄暦『六・七月の沖縄』舞台『グスーヨー! 32軍壕へメンソーレ』2026年版

《Piratsuka Special》
舞台『グスーヨー! 32軍壕へメンソーレ』2026年版

~沖縄戦では誰もが被害者だった。戦跡から届く「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」の思い~

第二次世界大戦が終結して、今年で81年。激しい地上戦が行われた沖縄では、未だその爪痕は深く刻まれており、その負の遺産の一つに、首里城地下の未公開戦跡「日本軍第32軍司令部壕跡」がある。

ここは沖縄戦の際、日本軍の第32軍司令部が拠点とし、東京の大本営とも連絡を取り合いながら、作戦の指揮を執っていた場所だ。1944年末に構築が始まり、全長1キロあまりの坑道で兵士や労働者、学生など千人以上が生活していた。だが沖縄戦の泥沼化を受け、翌年5月の南部撤退が決まると、司令部は壕の主要部分と出入り口を破壊して撤退。戦後は崩落の危険が高いため、長らく閉鎖されてきたが、先の首里城火災を機に保存と公開を求める声が高まり、現在、沖縄県が一部施設公開に向けて発掘や調査を進めている。

この壕が「2028年8月15日に、ついに一般公開される」という設定で話が展開するのが、6/20(土)、21日(日)に那覇市のパレット市民劇場で上演される舞台作品『グスーヨー! 32軍壕へメンソーレ』だ(タイトルの意味は「皆さん、32軍壕へいらっしゃい」)。本作は昨年、沖縄出身の俳優6人によって東京と沖縄で上演されており、今回は6人中2人が新キャストに交代しての再演となる。

主人公は壕の一般公開を控え、内部を案内する平和ガイドに採用されたクォーターの女性。彼女が壕の中でガマフヤー(遺骨収集人)や神人(かみんちゅ)のおばぁ、日本兵やうちなーんちゅの地縛霊、そして自身の祖父であるアメリカ軍ラジオ通信兵の霊と出会い、彼らの記憶や言葉をたどることで、誰もが極限状態にあった沖縄戦の実態を知り、戦争の悲惨さと平和の尊さを改めて体感する…という物語だ。

この企画を立ち上げ、前回に続き主演を務めるのは、現在東京を拠点に俳優・タレントとして活動する外間愛彩(ほかま・めい)。アメリカ人の父とうちなーんちゅの母を持つ彼女は、以前から「自分自身がハーフということもあって、どちらか一方向からではなく、複数の視点から見た沖縄戦を描きたいと思っていた」という。

「沖縄戦では、沖縄の人も県外の人もアメリカ人も、それぞれの立場で葛藤や正義感を抱えて苦しんでいたはず。そんな戦争に『どっちが正しい』なんてなくて、結局はみんなが被害者だったんじゃないか、と」

その思いを受けて脚本を執筆し、自らもガマフヤー役で出演するのが、うちなー噺家で俳優の藤木志ぃさーだ。藤木は「沖縄戦で一番被害を受けたのが沖縄の人間であることは、間違いない事実」と前置きしたうえで、こう語る。

「沖縄戦の悲惨さを広く伝えようとしたとき、その事実だけを前面に出して訴えても、県外では『また沖縄が被害者面してる』などと言われかねない。でも、実際には日本兵もアメリカ兵も、沖縄戦に関わった者は誰もがひどい目に遭い、多くの人が亡くなっているわけです。つまりは全員が犠牲者で、勝者は誰もいなかった。それを芝居で表現することで、『戦争には意味がない』と伝えるとともに、どの立場の人が見ても『これは他人事ではなく、自分にも関係ある話なんだ』と受け止めてもらえるのではないか、と思いました」

そのために藤木が選んだ舞台が、「以前から気になって資料を集めていた」という第32軍壕だ。物語の中で、沖縄戦に従軍した日本兵と主人公の祖父(の霊)は、それぞれの立場で経験した戦闘の苛烈な状況と、その中で自分自身が人間の心を失いかけた記憶、そしてそれに対する後悔を互いに語っていく。その告白の内容は非常に重いが、かといって作品全体のトーンはまったく暗くはなく、全編がコメディタッチ。俳優陣の息の合ったやりとりと笑いの中に、真摯なメッセージを折り込み、観客を物語の世界に引き込んでいく。

そして終盤の乱舞のシーンからは、「戦争のない世の中になりますように」というキャラクターの、そして演じる俳優たちの、強く前向きな思いが伝わってくる。外間は「沖縄では誰もが知っている『命(ぬち)どぅ宝(=命こそ宝)』という言葉の意味、そして生きていることの喜びについて、この作品で改めて考えてもらえたら」と語った。

戦後80年を超えてなお、世界のどこかで戦争が続く今こそ、戦争を「自分ごと」として受け止め、「戦争そのもの」の罪深さを考えることが重要なのではないだろうか。慰霊の日を前に、一人でも多くの人に観てほしい作品だ。(取材&文・高橋久未子)

舞台写真・平良太宣キャスト写真:PERRY HOKAMA
キャスト写真:比嘉恵太(HIGA STORE)

[STAGE INFO]
◆舞台『グスーヨー! 32軍壕へメンソーレ』2026年版
主催・企画制作:沖縄俳優部
脚本・演出:藤木志ぃさー
演出監修:鷹野克己
音楽:照屋林賢(りんけんバンド)
出演:外間愛彩/藤木志ぃさー/海老沢健次/平良太宣/川田広樹/城間やよい

日時:2026/6/20(土)昼13:00/夜18:00、6/21(日)昼12:00
会場:パレット市民劇場(那覇市)
料金:前売4,000円/当日4,500円、応援チケット10,000円
問合せ:沖縄俳優部 TEL.070-4365-2213 okinawa.haiyuubu@gmail.com

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