箆柄暦『二・三月の沖縄』2026 沖縄県三線製作事業協同組合 理事長・渡慶次道政
- 2026.02.02
- インタビュー
《Piratsuka Special》
沖縄県三線製作事業協同組合
理事長・渡慶次道政
~600年続く三線文化を次世代に継承していく~
沖縄で600年におよぶ歴史を持つ「三線」。島々の民謡、琉球古典音楽、琉球舞踊、組踊、沖縄芝居、エイサーなど、琉球芸能には欠かせない楽器であると同時に、それ自体が重要な伝統工芸品であり、三線づくりもまた、後世に受け継がれるべき貴重な技術といえる。
だが近年は、職人の高齢化と後継者不足、棹となる木材のクルチ(黒木=黒檀)の枯渇、安価な海外産品の増加など、技術の継承が危ぶまれる事態が顕在化しており、職人の間に危機感が広がっていた。もともと三線職人は各自で工房を構え、自営業者として三線の製作や販売を行ってきたが、こうした難問は一個人の努力で解決できるものではない。そこで有志が集まり、「組織で問題に立ち向かおう」と2010年に設立したのが「沖縄県三線製作事業協同組合」だ。
創設時から組合に参加する現理事長の渡慶次道政は、「三線は沖縄の文化の原点だから、絶対に絶やしてはいけない、との思いで、三線づくりと組合の活動に尽力してきた」と語る。現在、組合の活動の主軸となっているのは、組合事務所に併設された店舗やオンラインショップでの三線の展示・販売だ。入門者が手に取りやすい低価格の製品をはじめ、職人がていねいに仕上げた「作り手の顔が見える」三線は、価格帯を問わず全品に1~5年間の保証が付帯しており、試し弾きも可能なので、初心者も経験者も安心して購入できる。
また、組合では通常の三線のほか、胴の部分に泡盛のラベルをデザインした「泡盛三線」や、知名定男・大工哲弘・宮沢和史ら著名な実演家と共同製作した「アーティストモデル三線」など、組合オリジナルのコラボ三線も販売している。棹にクルチ以外の木材(代替材)を使用し、若手職人が製作を担当するこれらの製品が生まれた背景には、そのユニークさで三線のPRや販路拡大を目指すだけでなく、将来的なクルチの枯渇を見据えた代替材の研究開発、若手職人の仕事の創出といった目的もあるという。
さらに組合は三線ファンを増やすべく、県内外で三線教室や三線ライブ、展示会への出展なども実施してきた。この春には理事長の渡慶次が、3月4日(さんしんの日)から3月8日(さんばの日)にかけて、沖縄県立博物館・美術館で初の個展「三線の魅力」を開催する。渡慶次は三線職人として50年を超えるキャリアを持ち、2024年には国の伝統工芸士認定も受けた大ベテラン。本人は「三線づくりは奥が深くて難しい。どれだけ作っても(完成度に)満足したことはなく、一生勉強だと思っている」と謙虚に語るが、彼の手から生み出される三線は多くの弾き手を魅了し、その名演を支えてきた。会場では新作18点を含む三線約40点や、カラクイ・駒など小物類を展示するほか、実演家とのトークショー、三線・三板体験なども行う予定だ。
そして3月28日には、組合が楽器メーカーのヤマハや大学等と共同で進める「沖縄三線文化継承プロジェクト」の研究発表を兼ねたレクチャーコンサートが、東京のヤマハホールで開かれる。このプロジェクトもまた、三線づくりの技術を次世代につなぐための取り組みの一つ。地道な努力を積み重ねる職人たちの活動を、この機会にぜひ知ってもらえればと思う。(取材&文・高橋久未子/撮影・萩野一政)
沖縄県三線製作事業協同組合 理事長 渡慶次道政(とけし・みちまさ)
1948年、今帰仁村生まれ。十代から歌三線に魅了され、73年に三線職人の故・渡名喜興進に弟子入り。84年に独立し、那覇の自宅に渡慶次三線工房を構える。2013年、沖縄県工芸士認定。2024年、経済産業大臣指定・伝統工芸士認定。
[Event Info1]
渡慶次道政 個展「三線の魅力」
https://okinawa34.jp/
日時:2026/3/4(水)~3/8(日)10:00~18:00(初日12:00開場/最終日15:00閉場)
場所:沖縄県立博物館・美術館 博物館実習室(那覇市)
料金:入場・各種体験ともに無料
問い合わせ:沖縄県三線製作事業協同組合 TEL.098-884-8288 info@okinawa34.jp
[Event Info2]
沖縄三線文化継承プロジェクト レクチャーコンサート「しまの音」~研究と演奏でひもとく、三線の未来~
https://retailing.jp.yamaha.com/shop/ginza/hall/event/detail?id=8031
日時:2026/3/28(土)13:30開場/14:00開演/16:30終演
場所:ヤマハホール(東京・銀座)
料金:5000円
問い合わせ:ヤマハ株式会社研究開発統括部 https://inquiry.yamaha.com/contact/?act=56&lcl=ja_JP
出演:新垣俊道(琉球古典音楽)/親川遥(琉球古典音楽)/仲宗根創(沖縄民謡)/前田博美(沖永良部民謡)/豊里美保(八重山古典民謡・古謡)/小渡大海(八重山古典民謡・古謡)/山里静香(舞踊)
登壇:仲嶺幹(沖縄県三線製作事業協同組合)/遠藤美奈(沖縄県立芸術大学)/山田典子(琉球大学)/森隆志(ヤマハ株式会社)/稲岡紋子(ヤマハ株式会社)