三線や島太鼓など沖縄の伝統楽器と、洋楽器を組み合わせたバンドサウンドに、沖縄独特の節回しのメロディを乗せ、ウチナーグチの歌詞で沖縄ならではの情景や心情を歌う「沖縄ポップ」。今では日本の音楽シーンの一ジャンルとして定着したこの音楽スタイルを、1990年代に世に知らしめ、以降も沖縄音楽界を代表するトップランナーとして活躍してきたのが「りんけんバンド」だ。

リーダーの照屋林賢が作編曲を手がける、時にリズミカルで心躍る、時にメロウで心に響く楽曲の数々と、幼い頃から民謡のステージに立ってきた歌姫・上原知子の、凜として圧倒的な存在感を放つ美声。そして男性ボーカル3名による、エイサー演舞を取り入れた勇壮なパフォーマンスは、沖縄県内はもとより全国や海外でも高い人気と評価を得ており、コンサートはいつも幅広い年齢層のファンで盛り上がる。林賢は「見た方が喜んでくれるのは、いつ来てもコンサートの内容が変わらないからかも」と笑う。

「以前、コンサートで曲の構成を大幅に変えたら、お客さんに『前回のコンサートでやってた、あの曲が聴きたかったのに』って残念がられたことがあったんです。そうか、そういう期待を裏切っちゃいけないなと思って、それ以降、ステージ展開はあえて毎回同じにしています」

とはいえ、その「変わらなさ」を貫いてなお、りんけんバンドに多くのリピーターがついているのは、楽曲のクオリティ、そしてステージの楽しさに、揺るぎない魅力があるからに違いない。

そんなりんけんバンドのコンサートが、昨年末から那覇市の国際通りど真ん中にある「てんぶす那覇・テンブスホール」で開催されている。2024年秋までは、北谷町美浜にホームグラウンドとなるライブハウス「カラハーイ」があり、隣接するレコーディングスタジオやレストラン、ホテルと併せて林賢が経営を担っていたが、数年前にレストランとホテルは他社に譲渡し、事業を音楽一本に集約。スタジオとライブハウスも移転を検討する中、2024年から林賢がテンブスホールの管理・運営に携わることとなり、りんけんバンドの公演も同所で開催されるようになった。林賢は「次はここを文化の発信拠点として、音楽や映像などのコンテンツを生み出していきたい」と意気込む。

「ホテルやレストラン事業も好きだったけど、そちらの経営に関わっていると、どうしても音楽をやる時間が減ってしまう。やっぱり僕は音楽を作るのが大好きだし、いま75歳なので、この先は一番やりたいことをやって生きたほうがいいんじゃないかと（笑）。北谷町に建設中の新スタジオも11月に完成予定なので、スタジオができたらりんけんバンドの新曲もどんどんレコーディングして、新しいアルバムを出したいと思っています」

全国デビューから35年、結成からは48年の歴史を持つりんけんバンドだが、林賢曰く「曲作りもライブも、やりたいことはまだまだたくさんある」。11月には、毎年恒例の東京コンサートも決定している。「沖縄ポップの雄」による、常に変わらぬ圧巻のステージ、ぜひ会場で体感しよう。（取材＆文・高橋久未子／撮影：喜瀨守昭）