※以下の記事は、表紙掲載の内容をボリュームアップしたロングバージョンです。

ハンジロウは、那覇市首里出身の幼なじみ「たーにー」と「しゅうごパーク」によるお笑いコンビだ。高校時代から「しゃもじ」のコンビ名で活動を始め、卒業後の2003年から沖縄ローカル芸人として活躍。県内のお笑いコンテストで優勝するなど実績を積んだのち、全国区でのブレイクを目指して2009年に上京した。

奇抜なキャラやパフォーマンスに頼らず、ネタそのものの面白さで勝負するド直球の漫才やコントは、お笑いのプロやファンの間で高い評価を得たが、なかなか「ネクストブレイク」枠から抜けきれないまま10年以上が経過。その現状打破のきっかけになればと、2022年にコンビ名を「ハンジロウ」に改名したのも功を奏してか、翌年には「ビートたけし杯お笑い日本一」で優勝。昨年は結成16年以上の漫才師による大会「THE SECOND～漫才トーナメント～」でファイナルステージに進出した。さらに近年は「ウチナーグチで解説する英語授業」などの沖縄ネタをはじめ、ネット上でも多数の動画がバズっており、その実力に改めて注目が集まっている。二人は現状に手応えを感じつつ、「ここまでの道のりはめっちゃ地道だった」と、上京後の芸歴を振り返る。

しゅうごパーク「上京直後は全国放送のお笑い番組にレギュラー出演が決まって、『やった、これで売れる』と思ってたんです。でもその番組があまり盛り上がらないまま1年で終わっちゃって（笑）、そう甘くはなかったなと。そこからずっと、副業もしながらお笑いを続けてきました。他の仲間がジャンプアップしていく中、牛歩で階段をゆっくり上ってきた感じです」

それでも芸人を辞めて沖縄に帰ろうと思ったことはないという。

しゅうごパーク「途中で『もうやばいかも』って心が折れかけると、誰かが新しく仕事をくれたり、励ましてくれたりと、何かいいことがあって。東京にいる沖縄出身の方々も応援してくれたので、『まだ辞めなくてもいいかな』って思えたんです」

たーにー「それに何より、目の前でお客さんが笑ってる光景を独占できる快楽って、他の何にも代えがたいんですよ。僕らはきっとデビューしてからずっと、その魔法にかかってるんでしょうね」

王道の笑いを真摯に追求する彼らの芸は、ときに「クセがない」と評されることもあり、以前はそれに反発した時期もあったという。だが今は「これが自分たちの味だ」と、むしろ胸を張っている。

しゅうごパーク「僕らの芸はキャラ勝負ではなく、ネタありきの大衆演芸なので。子どもでもお年寄りでも、その場にいる人達をちゃんと笑わせたいんです」

たーにー「そして僕らの舞台を見てくれたお客さんが、その間は嫌なこと全部忘れて、『ああ楽しかった』って満足して帰ってくれたらいいなって、いつも思ってます」

近年は東京だけでなく、故郷の沖縄でもイベントやトーク番組の司会など、仕事が増えている二人。「沖縄で仕事ができるのは本当にありがたい」と喜ぶ一方、当面の間は東京で勝負し続けると決めている。

しゅうごパーク「やっぱり全国区の賞レースでタイトルを取りたいので。ウチナーンチュでビッグレースのチャンピオンになった芸人はまだいないから、今はそれが一番の目標です。それが叶えば、この先もずっと芸人が続けられるだろうし、芸能の仕事だけでメシが食えるようになりたいです。いま娘が小学生なんですが、この子が20歳になったとき、『8割くらいはお笑いで稼いだ金で育てた』って言えるようになっていたいな、と」

たーにー「で、その姿を見ながら酒を飲みたい、と（笑）。僕自身は目標を叶えるために今、日々ゴミ拾いをして徳を積んでます（笑）。そういう心がけが、きっと芸にも反映されるはずと信じてるので」

結成20年を超え、若手から中堅の域に入ってなお、お笑いへの愛と情熱を燃やし続け、実直に芸を磨き続ける彼ら。目標を達成する日は近いと信じてやまない。ちばりよー、ハンジロウ！（取材＆文・高橋久未子／撮影・萩野一政）