箆柄暦『三月の沖縄』2025 ネーネーズ
- 2025.03.01
- インタビュー

《Piratsuka Special》
ネーネーズ
~三五年の歴史を受け継ぎ、歌の思いを今に届ける~
※以下の記事は、表紙掲載の内容をボリュームアップしたロングバージョンです。
ネーネーズは、沖縄民謡唄者・プロデューサーとして長年活躍する知名定男が、1990年に実力派の民謡歌手4名を集めて結成した女性ボーカルグループだ。初代は90年代の沖縄ポップスブームを牽引する存在となり、国内外で活動したのち卒業。99年以降は数度の代替わりを経て、現在は6代目メンバーが那覇・国際通りの「ライブハウス島唄」を拠点に、オリジナルの沖縄ポップスや民謡を中心とした、華やかで聴きごたえのあるステージを繰り広げている。
現メンバーは、今年でネーネーズ在籍20年となる30代の那覇出身・上原渚を筆頭に、2019年加入の名護出身・小濱凜、23年加入の西表島出身・狩俣幸奈(ともに20代)、そして今年(2025年)2月に加入したばかりの南大東島出身・内里美音(17歳)の計4名。年齢に幅はあるが、それぞれ幼少期から民謡に親しんで育った彼女たちに共通するのは、唄者としての高いポテンシャルと明るいキャラクター、そして「ネーネーズが大好き」という強い思いだ。今回は一人ひとりにネーネーズ加入のきっかけや、日々のライブに対する意気込み、師・知名定男への敬意、将来の夢などを、ざっくばらんに語ってもらった。
●ネーネーズに憧れて歌の世界へ
—-まずはお一人ずつ、ネーネーズ加入の時期と、加入のきっかけを教えてください。
上原渚 私は2005年に17歳で加入しましたが、小さい頃からネーネーズに憧れていました。初代ネーネーズの吉田康子さんが私の叔母で、私は小学6年生から康子先生に弟子入りして、民謡を習い始めたんです。その頃にはネーネーズの素晴らしさや実力を実感していたので、「私のようなレベルの歌い手が入れるグループじゃない、手の届かない存在だ」と思っていました。だから、康子先生を通じて加入の打診があったときは、本当に夢のようだったし、嬉しかったです。その後、加入して7年ほど経ったとき、喉の不調でやむなくいったん卒業したんですが、10ヶ月ほどでメンバーに欠員が出ると知り、「やっぱりネーネーズに戻りたい」と強く思い、定男先生やメンバーにも受け入れてもらって、復帰しました。それからずっとネーネーズで歌い続けて、今年で20年になります。
狩俣幸奈 私は西表島出身で、主に祖父母に育てられたんですが、二人とも民謡が大好きだったので、私も小さい頃から沖縄、八重山、宮古といろんな民謡を聴いて、三線も自然と習い始めました。ネーネーズを知ったきっかけは、父がネーネーズのファンで、特に代表曲「黄金の花」が好きだったからです。それで私が三線を始めたとき、父に「ネーネーズになれ」って言われて(笑)。当時はネーネーズのライブも見たことないし、歌もCDで聴くだけだったから、もう「別世界の人たち」って感じで「いや、さすがにそれは無理でしょ」と。でも、2023年にInstagramでネーネーズが新メンバーを募集しているのを目にして、「何もしないよりは挑戦してみよう」と、思いきって応募したんです。そうしたらオーディションに合格して、私も最初は夢かと思いました。祖父母にも報告しましたが、冗談だと思ってたみたいで(笑)、加入後の私のステージを実際に見て、ようやく信じてくれました。
小濱凜 私も小さい頃からネーネーズのファンでした。私の母となぎ姉(渚)が従姉妹で、康子先生は祖母にあたります。私もずっと歌三線を習っていたので、その勉強も兼ねて、ライブハウス島唄のホールでアルバイトをしていたんですが、2019年に康子先生を通じて、ネーネーズ加入のお話をいただきました。厳しい世界ということはわかっていたし、その時点では技術も知識も足りない私がネーネーズとしてステージに立っていいのか?と迷いもありましたが、やっぱりネーネーズは憧れの存在だったし、「康子先生や、なぎ姉みたいになりたい!」という目標もあったので、思いきって飛び込みました。まさか、なぎ姉と同じステージで歌える日が来るとは思ってなかったです。
内里美音 私は南大東島出身で、島では「大東太鼓」という伝統芸能をやっていたんですが、そのステージで一度、5代目ネーネーズの皆さんと共演する機会があったんです。初代ネーネーズは母(民謡歌手の内里美香さん)が好きで、家でもよくCDを聴いていたので、歌は知っていました。でも、初めてナマでネーネーズの歌を聴いたらものすごいオーラで、一瞬で「めっちゃカッコイイ!」って心惹かれました。その中でも特になぎ姉に憧れて、「なぎ姉と同じ高校に行きたい、将来は歌手になりたい」と思い、南風原高校の芸能コースに進学しました。そうして勉強している中でネーネーズ加入のお話をいただいて、今年(2025年)2月からステージに立っています。最初は実感がありませんでしたが、最近ようやく「ネーネーズの一員になったんだ」と感じられるようになりました。
●曲に込められたメッセージを聴き手に届けたい
—-皆さん、ネーネーズに憧れていたということですが、ネーネーズのどんなところに惹かれましたか?
渚 民謡で培った歌声で、標準語の沖縄ポップスを歌う、そこには聴き手に寄り添う温かさがあって、私もああなりたいと思いました。今でも初代は憧れですし、そう簡単には超えられない大きな目標です。ただ、私たちも6代目ならではのカラーを出していけたらと思っています。初代の頃よりオリジナル曲も増えてますし、今回、美音が入ってフレッシュさとパワーも増したので、30代の私もがんばらないと(笑)。ネーネーズとしての原点はしっかり守りつつ、新しい魅力も上乗せしていきたいです。
—-その「原点」とは、具体的にどういったことでしょう。
凜 ひとつは、定男先生が楽曲に込められたメッセージをきちんと理解して、聴き手に届けることだと思います。私たちは週5日ステージに立っているので、定男先生の楽曲を一番多く歌っているアーティストだと思うんです。先生の歌には、沖縄の歴史や問題に対するメッセージが込められていて、知れば知るほどすごいと思うし、私たちがそのメッセージを伝えていくには、どういう歌い方をすればいいのか。日々それを考えながら活動しています。
幸奈 私も加入前にネーネーズの歌を聴いていたときは、普通に「いい歌だな」と思ってましたが、いざ自分が歌うとなったとき、歌に深い意味があることに気付きました。今もまだまだ追いついていませんが、これからもっと歌の世界観を勉強して理解を深めて、定男先生の歌をより多くの方に届けていきたいです。
美音 特に私と同世代だと、まだネーネーズをよく知らない人も多いので、私自身がまずネーネーズの音楽を吸収して、若い人にも「こんな素晴らしい歌があるんだよ、聴いて!」って伝えていきたいです。実際、私も友達に声を掛けて、半ば無理矢理(笑)ライブに来てもらったりしてますが、観た人はみんな「すごい、こんなグループがいたんだね!」って感動してくれます。私自身は今はまだ加入したてで、毎日必死ですが、少しずつでも成長できたらと思います。
—-知名定男作品の中で、特に好きな曲はありますか?
渚 私は昨年(2024年)リリースしたソロアルバム用に、定男先生が書き下ろしてくださった新曲「やふぁやふぁとぅ」です。私のためだけの歌、ということもありますが(笑)、「戦争のない世の中であってほしい、人の心も凪のようにあってほしい」というメッセージが素晴らしくて、大好きです。いかにこの歌を柔らかく歌えるか、日々研究中ですが、歌えば歌うほど「先生の歌のいいところを伝えるにはまだ理解力が足りてないな、もっと頑張らないと」と思わされます。
凜 私は「うんじゅが情どぅ頼まりる」。小さい頃から大好きな歌です。定男先生みたいな味は、まだまだ出せませんが。
幸奈 私は「黄金の花」です。父をはじめ、家族もみんな好きな歌なので。
美音 私は…全部(笑)。歌詞の意味を理解しきれていない歌もたくさんありますが、先生の作るメロディが大好きです。
●改めて民謡と向き合った二人のステージ
—-現在、ネーネーズは週5日ペースでライブハウス島唄のステージに立っていますが、日々のライブで大切にしていることはありますか?
渚 お店では日によって客層が違うので、ライブ前にその日の予約状況を確認して、3ステージ分の曲構成を決めています。お子さんが多い日なら、一緒に振付や手遊びが楽しめるわらべ歌を入れたり、常連さんがいらしてたら、その方の好きな曲を入れてみたり。全体的にはネーネーズの曲だけでなく、沖縄民謡も取り入れながら歌っています。
ちなみに昨年(2024年)は幸奈が産休に入ったり、(前メンバーの)与那覇琉音が大学の都合で出演できない日があったりして、凜と二人でステージに立つ日が増えたんです。ネーネーズの曲の中には、二人では歌いにくいものも多いので、そうなると民謡中心に歌うしかないんですが、そこでハッと気付いたのが、「私はネーネーズに入って20年、ちゃんと民謡をと向き合ってこなかったんだな」ってことでした。もちろんネーネーズのステージでも民謡は歌いますが、いざ「民謡中心で」となると、「どうやって歌えばいいんだろう」と戸惑ってしまって。そのときは凜に助けてもらいました。
凜 私はネーネーズに入る前は、母と一緒に兄弟子の経営する民謡酒場で歌っていたので、そのときの経験が役に立ちました。なぎ姉と二人で歌うことになったときは、「小さい頃から民謡を歌ってて本当によかった」と思いました。
渚 このことがきっかけで、私も改めて民謡と向き合う覚悟ができました。これからは初心に戻って、ネーネーズの楽曲だけでなく、民謡も極めていきたいと思っています。子どもも保育園に通い始めて、少しずつ時間もできてきたので、空いた時間を民謡のお稽古に使っていきたいなと。
●コロナ禍中も配信ライブで音楽を届けた
凜 私はステージに立つときは、いい意味で「初心を忘れずに」と心がけています。やっぱり「慣れ」が一番怖いので…。歌って本当に奥が深くて、歌えば歌うほどいろいろなことが学べる。ステージでの緊張も楽しみの一つとして受け止めつつ、一緒に歌うなぎ姉からも日々、いろいろな技術を吸収していけたらと思っています。
幸奈 私の場合は「自分がなんで三線や歌を好きになったのか」という原点を忘れないことです。私は2歳くらいから祖父の三線をおもちゃ感覚で触っていたんですが、そのあと三線を習い始めて曲が弾けるようになったとき、すごく嬉しかったんです。祖父が教えてくれた、三線を弾く楽しさや歌う喜びを忘れずに、ステージに立ちたいと思っています。
美音 私は加入したばかりで毎日緊張してますし、歌も三線もまだまだですが、ネーネーズとしてステージで歌っていると、本当に楽しいんです。私が楽しく歌っていたら、お客様も楽しんでくださると思うので、今はそれが一番大事かなって。
—-コロナ禍ではライブハウス島唄も休業を余儀なくされましたが、ネーネーズはいち早く配信ライブに取り組んで、オンラインで活動を続けてきましたね。
凜 私が加入したあと、割とすぐコロナ禍に入ってしまったので、私は在籍年数は5年くらいですが、実際にお客様の前に立って歌ってる期間は3年くらいだと思うんです。でも、コロナがきっかけでSNSや配信ライブを始めたら、多くの方が投稿や配信を見てくださって。「コロナ禍でどこにも行けない時期に、配信でネーネーズさんの歌を聞いて元気をもらえました」って言葉をいただいたときは、本当に嬉しかったです。配信は今も週に1~2回のペースで続けていますが、なかなか沖縄に来れない方にも私たちの音楽を届けることができるし、コメントでいろいろと感想をいただくと、逆に私たちが元気をもらえます。ライブハウス島唄にも「配信ライブを観てファンになりました」って方が来てくださいますし、ファンの方々とこうした交流ができるようになったのは、良かったなと思いますね。
渚 やっぱり私たちの歌を聴いた方が笑顔になったり、涙を流したりしている姿を目の前で見ると、すごく嬉しいんですよね。コロナ禍はそれができなかったので、営業を再開したあと、目の前のお客様から拍手や笑顔をもらえると本当に楽しくて、「私はこれが味わいたくてステージに立ってるんだな」って思いました。
凜 そういえばライブハウス島唄のお客様は、今は観光客の方が多いんですが、できれば沖縄の方にも、もっと遊びに来てもらえたらと思っています。普段から民謡に親しんでいる沖縄の方は、いわば審査員みたいなもので(笑)、その前で歌うのは緊張しますけど、よりいっそう期待を裏切らないようなパフォーマンスを心がけるので、私たちの向上心も高まるんです。沖縄の方にも、ぜひ気軽に足を運んでもらえたら嬉しいです。
今年の抱負は「新作アルバム発売と紅白歌合戦出場」、将来の目標は「初代に続く海外ツアー」と、大きな夢を掲げる6代目ネーネーズ。30年以上続くグループの歴史を受け継ぎ、日々アップデートを続ける彼女たちの歌には、沖縄と沖縄の音楽が持つ奥深さを改めて感じさせ、聴く人の胸を揺さぶるチカラがある。ライブハウス島唄での公演は、週1~2回のペースでライブ配信も行われているので、ぜひ。(取材&文・高橋久未子/撮影・金載弘)
ネーネーズ
1990年結成。グループ名の「ネーネー」はウチナーグチで「お姉さん」の意味。91年に1stアルバム『IKAWU』で注目を集め、翌年『ユンタ』でメジャーデビュー。99年にメンバーを一新。6代目となる現メンバーは(写真右上から時計回りに)上原渚・狩俣幸奈・内里美音・小濱凜。
ネーネーズ公式サイト
https://nenez.bitfan.id/
[Live Info]
◆ネーネーズLIVE in 那覇
日時:毎週木曜~月曜(不定休あり)19:00/20:10/21:20(入替なし)
場所・問合せ:ライブハウス島唄 TEL.098-863-6040
料金:入場料2,310円(高校生以下はキャンペーン中につき無料)、配信視聴料1,500円(配信は週1~2回実施)
ライブの詳細はライブハウス島唄のWebサイトと、ネーネーズの公式サイトでチェック!
ライブハウス島唄(ライブ開催日・料金・飲食メニュー等)
http://livehousesimauta.com/
ネーネーズ公式サイト(配信スケジュール)
https://nenez.bitfan.id/
◆ネーネーズLIVE~内里美音お披露目ライブ~
[大阪]
日時:4/7(月)18:30開場/19:30開演
場所・問合せ:バナナホール TEL.06-6809-3016
料金:一般前売4000円/当日4500円・高校生以下前売2000円/当日2500円(各1ドリンク別途)、未就学児膝上無料
[名古屋]
日時:4/8(火)18:00開場/19:30開演
場所・問合せ:オキナワAサインバーKOZA TEL.052-433-9177
料金:一般前売4000円/当日4500円・高校生以下前売2000円/当日2500円(各2オーダー別途)、未就学児膝上無料
[東京・小岩]
日時:4/21(月)・22(火)17:30開場/19:30開演
場所・問合せ:こだま TEL.03-5668-2098
料金:一般前売4000円/当日4500円・高校生以下前売2000円/当日2500円(各飲食別途)、未就学児膝上無料