箆柄暦『九月の沖縄』2024 THE SAKISHIMA meeting(新良幸人×下地イサム)
- 2024.08.29
- インタビュー
《Piratsuka Special》
THE SAKISHIMA meeting[新良幸人×下地イサム]
~祝!サキシマ20周年 二人の歩みと共にサキシマの物語は続く~
石垣島白保出身で11歳から八重山民謡を学び、現在はソロのほか、人気バンド「パーシャクラブ」のボーカルとしても活躍する民謡シンガー、新良幸人。
宮古島の久松に生まれ育ち、故郷の方言で綴った歌詞を多彩なサウンドに乗せて歌うシンガーソングライター、下地イサム。
共に先島(宮古・八重山諸島)出身の二人が、2004年に結成したTHE SAKISHIMA meeting(以下サキシマ)は、幸人の歌三弦とイサムの歌・ギターをを中心としたツインボーカルユニットだ。島の言葉で歌詞を綴ったオリジナル曲に、それぞれの持ち歌や洋楽のカバーなどを交え、ハイセンスな中にも先島の風景や香りを感じさせる、独自の音楽性で人気を博してきた。そんな彼らが今年めでたく結成20周年を迎え、今月末に前作から7年ぶり、3枚目となるアルバム『Top Islands』をリリースする。
今作では、まずイサムがメロディとベーシックなアレンジを作り、そこに二人が共作で歌詞をつける、という流れで制作が進められた。その作業の中で生まれてきたのが、「島の子どもたちへの“はなむけ”になるような歌を作ろう」との思いだったと、二人は振り返る。
イサム「たとえば子どもが学校を卒業したり、島を出たり、結婚したり子どもが生まれたり、そんな成長の節目ごとに『いいんだよ、思いきって前に進みなさい』って、ちょっと背中を押してあげるような歌を作りたいね、と。島の子って、早ければ中学卒業と同時に島を離れて、親元から巣立っていくでしょう。そうやって大人になっていく子どもたちに、僕らも歌で花を添えられたらと思いました」
この思いは二人がともに50代半ばとなり、それぞれの子も成人した今だからこそ、湧き上がってきたものでもあるのだろう。一方で「言葉」に関しては、あえて一曲の中に石垣や宮古、沖縄本島など、いろいろな島の言葉をミックスして入れることを試みたという。
イサム「僕は20年以上、宮古島の方言で歌ってきたけれど、曲を作るときに他の島の方言を交ぜると『それは違う』って指摘されるんです。でも、実はそういう閉鎖性こそが、方言の衰退に繋がっている一面もあるんじゃないかと。今回は、自分たちが『この言葉、響きがいいね』とか『深みがあるね』などと感じたものを、それがどの島の言葉だとかは気にせず、どんどん使っていきました。そうすることで音楽の表現の幅も広がるし、めっちゃ楽しいし、何より『方言を将来に残す』ということを考えたら、閉鎖性を強めすぎて方言が消滅するより、他の島の言葉と混ぜてでも残っていくほうが、まだいいんじゃないかと思ったので」
幸人「まあ、イサムは方言の研究者的な一面もあるから、周りからいろいろ言われることも多いと思うけど、俺はなんともないからね(笑)。これでいいと思ってるよ」
そしてボーカルは、これまで二人が交代で担うことも多かったが、今回は幸人がメイン、イサムはコーラスと役割をほぼ固定。幸人の艶やかで華やかな歌声に、ぴたりと寄り添うイサムのコーラスがさらなる厚みと深みを与え、歌の世界がより色鮮やかに、一貫した景色で描き出されていく。幸人が「コーラスは苦労したはずよ」とねぎらうと、イサムは「この声を引き立てるためのハモりは、絶対俺に任せとけ!って感じです」と笑った。
そうして生まれたアルバムには、前出の子どもに向けた歌に加えて、メロディアスなラブソング、勇壮なエイサー風ナンバー、さらにはサキシマ版の音頭やクリスマスソングまで、バラエティに富んだ十二曲が収録された。レコーディングには、彼らのライブに長年出演しているドラマー兼パーカッショニストの川原大輔も参加し、大胆でありながら繊細、かつ土着的なリズムでアレンジをサポート。歌も演奏も、従来からの「サキシマらしさ」を一段とアップグレードして新境地を拓いた、心躍る一枚が完成した。
10月からは本作を引っさげて、沖縄および東名阪+九州で結成20周年記念ツアーを行う。皮切りとなる沖縄公演は、毎年秋に開催している「新意地(アライズ)豊年祭」とのダブル開催で、例年以上に賑やかなライブとなりそうだ。
幸人「20年前、最初に二人でライブしたときは『一度一緒に遊んでみようか』って感じだったけど、今では『このユニットが終わる日が来てほしくないな』って思うし、それぞれの音楽活動の中で、サキシマの存在がとても重要なものになってるのは間違いない。今回のツアーでは『ファンの皆さん、20年ありがとう』っていう思いも込めて、新曲だけでなく代表曲もたくさん歌っていきたいな」
ちなみに、アルバムタイトルの『Top Islands』は、幸人曰く「先(=先頭)を走る島」の意味だそう。
「先島って『日本のはじっこ』という意味が強いけど、日本地図の上下をひっくり返したら、先島が一番上にあって、アジアの入口にもなってることがよくわかるでしょ。だから先島は日本の頂、トップにある島なんだよ、ってね」
トップ・アイランズ出身の二人がこの秋、満を持して贈るトップ・クオリティの音楽体験。CDもライブも、ぜひお聴き逃しなく。(取材&文・高橋久未子/撮影・大湾朝太郎)
THE SAKISHIMA meeting(ざ・さきしまみーてぃんぐ)
1967年、石垣島白保生まれの新良幸人(あら・ゆきと、写真右)と、1969年、宮古島久松生まれの下地イサム(しもじ・いさむ、写真左)が2004年に結成。2008年にマキシシングル「SAKISHIMAのテーマ」をリリース。
THE SAKISHIMA meetingオフィシャルサイト
https://arize.jp/the-sakishima-meeting-home/
[CD Info]
THE SAKISHIMA meeting『Top Islands』
アライズ
ARIZ-2024
3,000円
2024/9/30発売
ウムーディレイ/伊原間クロスロード/ボーレボーレ/スクは今夜虹を見た/尺に触れ/先島音頭/シマータイム/アイヤラー/サーティハリ/アトリエの浜 [ボーナストラック]三太九郎兄小(さんたくろうすじゃがま)/サーレンユナイ
CD・20周年記念グッズ等の購入はこちらから
※CDは9/18(水)より予約受付開始
https://arize.thebase.in/
[Live Info]
◆THE SAKISHIMA meeting 20th Anniversary LIVE
https://arize.jp/event-the-sakishima-meeting/
※九州の2公演以外は川原大輔(dr)出演
【那覇公演・第9回 新意地豊年祭】
日時:2024/10/19(土)17:30開場/18:00開演
場所・問合せ:桜坂劇場ホールA(那覇市)TEL.098-860-9555
料金:前売4000円/当日4500円(各1ドリンク別途)
【大阪公演】
日時:2024/11/22(金)18:00開場/19:00開演
場所・問合せ:バナナホール TEL.06-6809-3016
料金:前売5000円/当日5500円(各1ドリンク別途)
【名古屋公演】
日時:2024/11/23(土)・24(日)17:30開場/18:30開演
場所・問合せ:Ebony&Ivory TEL.052-908-9900
料金:前売4500円/当日5000円(各1ドリンク別途)
【東京公演】
日時:2024/11/26(火)・28(木)18:00開場/19:00開演
場所・問合せ:南青山MANDALA TEL.03-5474-0411
料金:前売5000円/当日5500円(各1ドリンク別途)
【福岡公演】
日時:2024/12/6(金)18:00開場/19:00開演
場所・問合せ:LIV LABO https://livlabo.com/contact/
料金:前売4500円/当日5000円(各1ドリンク別途)
【熊本公演】
日時:2024/12/8(日)17:30開場/18:30開演
場所・問合せ:フェリシア TEL.096-354-7539
料金:前売7000円/当日7500円(各琉球弁当+1ドリンク付)