石垣島出身の3人組バンド「BEGIN」のギタリストであり、近年はBEGINの楽曲だけでなく他アーティストへの楽曲提供やプロデュースも手がける島袋優が、この2月、自身初となるソロアルバム『55rpm』をリリースした。きっかけは三年前、旧知の仲であるORANGE RANGEのNAOTOとHIROKIに、「優さん、ソロアルバムを作ったら？　プロデュースしますよ」と提案されたこと。それまでは「自分名義の作品なんて想像したこともなかった」そうだが、「いざ作り始めたら、めちゃめちゃ面白かった」と振り返る。

「島袋優のソロアルバムというと、俺が曲を書いてゲストボーカルが歌って…とイメージする人が多いかもしれないけど、今回はほとんどの曲を自分で歌っています。俺はもともとボーカリストではないし、BEGINでも歌ったことはなかったけど、2015年にCMソングとして書いた『海の声』をセルフカバーしたとき、自分の歌が想像を超えて世の中に広まっていくという体験をして、『俺の歌もちゃんと伝わるんだな』って感じたんです。それで今回は思い切って、自分で歌ってみようと。NAOTOとHIROKIだけでなく、大好きなミュージシャン友達や後輩達にも声を掛けて、『島袋優という人間を使って自由に遊んでほしい、俺は何やらされても断らないから』って言って（笑）、楽曲提供やアレンジ、歌、演奏などで参加してもらいました」

優の呼びかけに二つ返事で応じたのは、県内外総勢18組の音楽仲間達。ORANGE RANGEの二人やKiroroの玉城千春、MONGOL800のキヨサク、ディアマンテスのアルベルト城間、宮古方言シンガーの下地イサム、かりゆし58の前川真悟、D-51のYUら沖縄勢に加え、クレイジーケンバンドの横山剣、スキマスイッチの大橋卓弥、俳優の山田孝之らも参集した。優は「曲ごとに参加した人の個性が強く出るから、全十三曲がいい意味でめっちゃバラバラ（笑）。ビュッフェみたいなアルバムになった」と笑う。

その言葉通り、曲調はロックからラテン、バラード、ブルース、レゲエ、さらには音頭など多種多様。歌詞のテーマも曲ごとにさまざまだが、優のボーカルは時に甘く時に切なく、随所にブルージーな香りとポップな茶目っ気もにじませながら、その世界観を楽しげに表現していく。優は言う。

「ソロ活動には一人だからこそできる自由さと、一人だけではできない不自由さがあって、BEGINとはまた違った音楽の伝え方ができるのが面白い。ボーカリストとしての実力はまだまだだけど（笑）、今自分が表現できることはすべて出せたと思うので、たくさんの方に聴いてもらって、日々の暮らしを明るく楽しくする一枚になれたらいいなと思っています」

ちなみにタイトルの『55rpm』は、優の実年齢とシングルレコードの回転数「45rpm」を組み合わせたもの。プロデビューから30年以上、50代半ばとなった今だからこそ生まれた、味わい豊かな一枚だ。（取材＆文・高橋久未子／撮影・トッティー）