石垣島白保出身の民謡シンガー・新良幸人をボーカルに擁し、八重山・沖縄の民謡や、琉球旋律を取り入れたウチナーグチのオリジナル曲を、ロックやファンク、ジャズ、ラテンなど、多彩なアレンジでグルーヴィに聴かせる人気バンド、パーシャクラブ。1993年の結成後、翌年のCDリリース、翌々年のメジャーデビューを経て、沖縄県内はもちろんのこと、県外の沖縄音楽ファンの間でも絶大な支持を獲得し、以降もマイペースかつコンスタントに活動を続けてきた。

そんな彼らが、2023年11月に結成30周年の節目を迎える。バンドのリーダーで全曲の作編曲を手がける上地正昭（ギター）は、「最初はこんなに長く続くと思ってなかった」と笑う。

もともとパーシャクラブは、那覇でCM作曲家として活躍していた上地が、自身のバンドを立ち上げる際、幸人を誘ったのが誕生のきっかけだ。上地は当時、幸人の八重山民謡ソロライブを観て、その歌と三弦に圧倒的な才能と可能性を感じ、バンドに招き入れた。その直感は当然正しかったわけだが、加入後、幸人はもう一つの才能を発揮する。それが今ではライブの名物ともなっている「曲中曲間の爆笑トークと、仮装も辞さない抱腹絶倒パフォーマンス」だ。上地は言う。

「パーシャのライブって、歌三弦はもちろん最高に素晴らしいし、バンドもめちゃくちゃ高度な演奏をしてるんだけど、間に入る幸人のしゃべりや動きが、まるで芸人みたいなんだよね（笑）。そもそも『パーシャ』って、八重山の方言で『道化者』って意味なんだけど、幸人はまさにそれ（笑）。そのギャップが楽しすぎて、30年続けてこれたのかもしれないな」

一方の幸人は、「30年続いたのは、メンバー全員パーシャが好きで、パーシャの音楽のファンだったからだと思うよ」と振り返る。

「俺らの合い言葉は『がんばらないけど、くじけない』なんだけど（笑）、ハングリー精神はない代わり、音楽には厳しいからね、特にリーダーが。パーシャは俺のキャラもあって『楽しいバンド』って思われがちだけど、俺が自由に歌ってる後ろで、実はバンドはすごい難しいことをしてるわけ。楽しいけど音楽的にもすごい、それがパーシャのステキなところだと思うな」

この幸人の言葉に、ドラムの津波古慈乃と、パーカッション＆島太鼓の仲宗根“サンデー”哲も頷く。

「僕たちはずっと、音楽的に上地さんのレベルに追いつきたいと思ってやってきたから、厳しいこと言われてもついていくし、何よりパーシャは演奏してて楽しいんだよね。みんなで一緒にいるのも楽しいし、一緒に酒飲んでる時間はもっと楽しい（笑）」（慈乃）

「そう、ワクワクするよね。俺は幸人のソロでも太鼓を叩くけど、パーシャでやるたび、やっぱバンド楽しい！って思うもん」（サンデー）

そんな「音楽的にもパフォーマンス的にも楽しすぎる」パーシャクラブの単独ライブが、去った9月の東京公演に続き、2023年12月に那覇の桜坂劇場でも開催される。ここ数年はコロナ禍に加え、リズムの要だったベーシスト・神村英世の病気療養と逝去という出来事もあり、単独ライブはずっと行っていなかったが、30周年を機にいよいよ始動。サポートに女性ベーシストの福元梢と、キーボードの新川“mattarah”雅啓を加えた6人体制で、7年ぶりとなる沖縄単独公演に臨む予定だ。

上地曰く「30周年の締めくくりでもあるし、桜坂劇場は時間制限がないので、曲数は東京公演より増えると思うよ。幸人もさらにたっぷりしゃべるんじゃない？（笑）」とのこと。東京でも7年間のブランクを感じさせないどころか、よりエキサイティングにパワーアップしたバンドサウンドとパフォーマンスを披露し、会場を沸かせた彼ら。那覇公演もお見逃しなく！（取材＆文・高橋久未子／撮影・大湾朝太郎）

撮影協力：music bar OPA（那覇市前島2-1-7 ツインハウス6F）