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箆柄暦『八月の沖縄』2023 仲宗根創

2023.07.31
  • インタビュー
箆柄暦『八月の沖縄』2023 仲宗根創

《Piratsuka Special》

仲宗根創~昔歌を学び、新歌をつくる~

仲宗根創は、齢35にして芸歴すでに23年という沖縄民謡の歌い手である。民謡好きの祖父の影響で三歳から歌い始め、中学1年生のとき民謡歌手オーディションでグランプリを獲得しCDデビュー。高校時代には憧れの巨匠・登川誠仁(2013年没)に弟子入りして約10年間師事し、歌三線はもちろんウチナーグチや琉歌など、民謡にまつわるさまざまな教えを師から直接受けた。近年は沖縄県内外でライブ活動を行う傍ら、後進の育成に取り組んだり、別名義アーティスト「R∞2(ルーツ)」として沖縄音楽と他ジャンルの音楽を融合した作品を発表するなど、幅広い活躍を続けている。

そんな彼がこの6月、前作から7年ぶりとなる民謡アルバム『縁-en-』をリリースした。今作ではスタンダードな沖縄民謡に加え、宮古民謡や小笠原の古謡、オリジナル曲など全14曲を収録。スタジオ録音のほか、久高島で地元の人々や自身の祖父と一緒に歌った野外録音作品もあり、タイトル通りさまざまな「縁」の重なりを感じさせる内容だ。

昔歌で聴かせる歌三線は、長年の経験が磨いた技量に年を重ねたぶんの風格が加わり、三線の一音、歌のワンフレーズから心情のこもった繊細なゆらぎが伝わってきて、自然と歌の世界に引き込まれる。一方、オリジナル曲やカチャーシー曲は、おおらかな歌声とリズミカルな三線が心地よく、思わず一緒に口ずさみたくなる楽しさだ。創は「今回はシンプルに歌と三線だけの曲が多くなりましたが、やっぱりこれが自分には合うと思ったし、力を抜いて楽しみながら歌えました」と語る。

「今は歌が仕事にできる時代ですが、本来は歌って暮らしの中にあって、人の癒しや活力になるものだと思うんです。昔は年に一度の豊年祭が村最大のイベントで、それが沖縄の芸能活動の原点だったのかなと。そう考えると、いま僕が大事にすべきなのは、大きな舞台を目指すことより、小さな地域にも足を運んで、地元の方に歌を楽しんでもらうことなんじゃないか。そしてそのために必要なのは、歌三線の上手い下手以上に『本当に歌が好きで、歌うことを心から楽しむ』って気持ちかなと。そもそも僕の役割は、自分の歌を聴いてもらうことではなく、沖縄の歌の良さを伝えることだと思っているので、そこは調子に乗りすぎず、三線も琉歌ももっと勉強していきたいです」

また別名義のR∞2では、沖縄の音楽にエレクトロ・ダンスミュージックやレゲエ、ポップスなどを組み合わせたオリジナル曲を制作しているが、その活動の延長線上には「R∞2をきっかけに、沖縄民謡を好きになる人が増えたらいいな」という思いがあるという。

「ただ、R∞2は僕自身が民謡と同じくらいそういう音楽が大好きで、面白いと感じるからやってるだけで、義務感とかは一切ないです(笑)。登川先生はよく『人が聴いて面白いのが歌だよ』って仰ってましたが、僕も民謡とR∞2の両方で、自分自身が面白がれて、聴き手にも面白いと思ってもらえる歌を作りたい。先輩方がそうしてきたように、古い歌を学びつつ、今の時代ならではの新しい歌を生み出せればと思います」(取材&文・高橋久未子/写真・野原彰人)

仲宗根創(なかそね・はじめ)

1988年那覇市生まれ。小学校半ばから沖縄市で暮らす。2000年にアルバム『アッチャメー小』でCDデビュー。2003年より故・登川誠仁に師事。現在は県内外で演奏活動を行うほか、後進の育成にも精力的に取り組んでいる。毎週月・水は長寿ラジオ番組「民謡で今日拝なびら」にレギュラー出演。2018年からは別名義「R∞2(ルーツ)」でも活動中。

仲宗根創 オフィシャルサイト
https://sites.google.com/view/nakasonehajime/home

[Album Info]
仲宗根創『縁-en-』

マルフクレコード(普久原楽器)
FD-123
2,750円
2023/6/3発売

島尻千鳥/ふがに家/家庭和合/孝行口説/今帰仁天底節/丸木舟/昔世ぬくらし/ぶながやの唄/御物奉行/恋語れー/ナークニー~今帰仁手間當節/恋ぬ花/んなまからどぅ宮古ぬ世/唐船ドーイ

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