沖縄県内で行われるあらゆるイベントと、沖縄県外で行われる沖縄関連イベントの情報を収集・整理し、本誌（フリーペーパー）やインターネットを通じて発信してきた箆柄暦が、今号でついに創刊20周年を迎えた。まずは長年にわたり、本誌の活動を応援・支援してくださった皆さまに、心より御礼を申し上げたい。

箆柄暦の初号が発行されたのは、2003年5月。きっかけは「沖縄には楽しいイベントがたくさんあるのに、その情報が一か所にまとまっていないため見つけにくく、人が集まらないのはもったいない」と感じたことだった。特に、自分たちが「素晴らしい！」と確信している（今風にいえば「推し」の）アーティスト達がライブをやるなら、一人でも多くの人にその情報を届けてライブに足を運んでもらい、その魅力を体感してほしい。また、彼らのことをまだ知らない人がいるのなら、「ここにこんなステキな人達がいるよ！」と紹介し、その魅力を伝えたい。

端的にいえば、それが創刊時から変わらぬ箆柄暦の原動力の一つなのだが、そんな数多くのアーティスト達の中でも、ひときわ強く私たちにそう思わせたのが、新良幸人（あら・ゆきと、歌三弦）と上地正昭（g／作編曲／リーダー）を中心とするバンド「パーシャクラブ」である。

パーシャクラブの誕生は、箆柄暦より10年早い1993年。那覇でCM作曲家として活躍していた上地が、「八重山民謡の旗手」と称されていた幸人を誘い、結成したのが始まりだった。当時は沖縄音楽ブームもあり、沖縄音楽をポップに演奏するバンドが次々と登場していたが、その中でも彼らの音楽の斬新さとクオリティの高さは群を抜いていた。

琉球旋律を取り入れたキャッチーなメロディが印象的なオリジナル曲や、八重山・沖縄の民謡を、ロックやファンク、ジャズ、ラテンなど多彩な手法で自在にアレンジし、圧倒的なビート感でグルーヴィに表現する上地のセンス。八重山民謡で鍛えた確固たる実力を持ちつつ、その枠を軽々と飛び越えるエモーショナルな三弦プレイとセクシーな歌声で、聴き手を魅了する幸人のパワー。

この二人がタッグを組み、バンドメンバーと共に生み出した楽曲は、私たちの心を鷲掴みにし、「この音楽を、もっと多くの人に聴いてほしい！」と思わせた。いわば箆柄暦の活動の原点でもある彼らに、今回こうして表紙を飾ってもらい、その魅力を改めて紹介できることを、本当に嬉しく思う。

そしてパーシャクラブも、今年は結成30周年を迎えて活動を活発化させる。6月には東京で「琉球フェスティバル」に出演するほか、10年ぶりのニューアルバムとして選りすぐりのエイサーナンバーを収めたベスト盤『Parsha cluB EISA SELECTION』をリリース。さらに秋口には、久々の東京単独ライブも計画中とのこと。ぜひこの機会にライブやCDで、心踊るパーシャサウンドを堪能していただきたい。

ちなみに「パーシャ」は幸人の故郷・八重山の方言で「道化者」のことで、「ぴらつか」は「怠け者」のこと。歌や踊りに興じてばかりで働かない人も「ぴらつか」と呼ばれるが、そういう人もお祭りや祝いの席では大活躍したりする。箆柄暦も皆さんが「楽しいコトしたい！」と思ったとき、役に立てるカレンダーでありたい。そう願っている。（文：箆柄暦 萩野一政・高橋久未子／撮影：大湾朝太郎）