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箆柄暦『八月の沖縄』2022 ジュス(笹子重治+ゲレン大嶋+宮良牧子)

2022.08.03
  • インタビュー
箆柄暦『八月の沖縄』2022 ジュス(笹子重治+ゲレン大嶋+宮良牧子)

《Piratsuka Special 》

ジュス(笹子重治+ゲレン大嶋+宮良牧子)
『サガリバナ~島をくちずさむ Vol.1』
~東京で生まれた島の歌をくちずさむ~

片や日本屈指のブラジリアン・スタイル・ギタリストであり、作編曲家・プロデューサー。弦楽トリオ・ショーロクラブやインストユニット・コーコーヤで活動するほか、ソロアーティストとしても、また他アーティストのサポートプレイヤーとしても、音楽界で引く手あまたの笹子重治。

片や沖縄系アンビエントユニット・TINGARA(てぃんがーら)でデビューし、その後も沖縄&ハワイ音楽ユニットのチュラマナ、ギター&三線ユニットのcoco←musika(ココムジカ)など、さまざまなグループで三線演奏や楽曲制作を手がけてきたゲレン大嶋。

共に30年来の沖縄ファンであり、長年飲み友達として親交のあった二人が、昨年春、「愛する沖縄」をテーマに曲作りを開始。ボーカルに石垣島出身のシンガー・宮良牧子を迎えて結成したユニット「ジュス」の初アルバム『サガリバナ~島をくちずさむ Vol.1』が、この7月にリリースされた。

ユニット結成のきっかけは、ゲレン宅でのサシ飲みの最中に、笹子が何気なく「歌ものでもやりましょうか」と言い出したことだという。従来から笹子の大ファンだったゲレンは、「笹子さんがアレンジしてくれることをイメージしたら、次々と曲が浮かんできて」、短期間で大量のデモ音源を制作。目指したのは「昔からある島唄のような、それでいて新しさもある、時代を超えて長くくちずさまれる歌」だった。それらのデモを聴いた笹子は「曲と歌詞のクオリティにびっくりして」、自身も作曲とアレンジに着手。「本格的に二人の曲作りが始まった」と語る。

「もともとゲレンさんは、沖縄以外の音楽にも三線を合わせていける、フレキシビリティのあるプレイヤーだと思ってたけど、今回一緒に曲作りをしてみて、実はコンポーザーとしての能力も高かったんだと気付きました。あと、僕らは好きな音楽への接し方が似てて、二人とも『よそ者』の立場から、好きな土地の音楽を自分のやり方で表現したいと考えているんですね。今回の曲も、僕らが島の人ではないからこそ作れた音楽だと思います」

そうして「歌」は完成したが、二人とも「自分で歌う気はまったくない」タイプのため、歌い手が必要となった。そこでゲレンが白羽の矢を立てたのが、かつてチュラマナで共に活動した“マッキー”こと宮良牧子だった。

「僕らの曲は、民謡とポップス両方の素養を持っている人でないと歌えないんですが、マッキーなら石垣島生まれで民謡も勉強しているし、シンガーとしてはずっとポップスを歌ってきたので、ばっちりだなと。あと、彼女は『魂の歌声』みたいに評価されることが多くて、そういう部分ももちろんあるんですが、実はボーカリストとしてのテクニックがしっかりしてて、曲に対しての解釈やアプローチなど、表現するうえでの選択肢をいっぱい持ってるんです。彼女が歌ってくれれば間違いないと思ったし、そのうえ本人が以前から『笹子さんのギターで歌ってみたい』と熱望してたので、話を持ちかけたら即快諾でした」

宮良は「長年の夢が叶って嬉しい」と喜ぶ一方、受け取ったゲレン作のデモを聴いて「思わず涙が出た」という。ゲレンはその言葉を聞き、「僕のギターで作ったデモでマッキーが涙したということは、これを笹子さんがアレンジしてマッキーが歌ったら、聴いた人は全員泣くぞ」と成功を確信した。

そうして完成した音楽は、軽やかなリズムと繊細な音運びで心躍らせるギターに、島唄の情感とポップスの洗練を併せ持つ伸びやかな歌声がのり、要所要所で三線の独創的なフレーズが印象的に響く、この三人ならではの極上の「島の歌」となった。加えて今回は、ゲレンと旧知の仲である木版画の巨匠・名嘉睦稔が、島言葉の歌詞2曲とジャケット画を提供。沖縄の情景を色彩豊かに描き出すジュスの世界観に、更なる彩りを施している。

「ジュス」は古語で「誦す=くちずさむ」の意味。聴けば思わずくちずさみたくなる、新しくてどこか懐かしい島の歌が生まれた。(取材&文・高橋久未子/撮影・Yoshio Machida)

笹子重治(ささご・しげはる、写真左):ギタリスト、作編曲家、プロデューサー。1986~87年にかけてブラジルで活動し、帰国後に弦楽トリオ・ショーロクラブを結成。2004年には新たなインストリオ・コーコーヤを立ち上げる。ソロアーティストとしても活動するほか、他アーティストへの楽曲提供やギターサポート、プロデュースも多数手がけており、比屋定篤子、桑江知子、大島保克、古謝美佐子など沖縄系ミュージシャンとの共演も多い。

ゲレン大嶋(げれん・おおしま、写真右):1999年、沖縄系アンビエント音楽ユニットTINGARAの三線プレイヤーとしてデビュー。2006年からはハワイアン・スラック・キー・ギターの名手・山内雄喜と、ボーカリストの宮良牧子・上原まきと共に組んだチュラマナで2枚のアルバムをリリース。2010年以降は、日本を代表するギタリストの一人である梶原順とのインストユニットcoco←musika(ココムジカ)を中心に活動している。

宮良牧子(みやら・まきこ、写真中):石垣島出身、東京在住のヴォーカリスト。2005年にアルバム『心の星』でソロデビューし、2006年からゲレン大嶋らと共に沖縄&ハワイアン音楽ユニット「チュラマナ」に参加。2010年にはNHK連続ドラマ小説「ゲゲゲの女房」サウンドトラックに参加し、2012年の映画『ペンギン夫婦の作りかた』では主題歌の作詞作曲と歌唱を担当。2017年にソロとして3枚目のアルバム『シチヌウムイデ』をリリース。

 

[CD Info]
ジュス『サガリバナ~島をくちずさむ Vol.1』
JUSU records
JUSU-001
2,300円
2022/7/20発売

島へ/島のワルツ/サガリバナ/行ち戻い /竹富の猫小/花とオルゴール/風や向かい風/あなたの島 あなたの歌/イアイ(伝言)

CDの詳細と購入はこちらから
https://jusu.theshop.jp/items/60734548

[LIVE Info]

●東京
日時:2022/8/28(日)18:00開場/19:00開演
場所・問い合わせ:中目黒楽屋 TEL.03-3714-2607
料金:前売3,500円/当日4,000円 ※オーダー別途
サポート:ヤマカミヒトミ(fl)

ライブの詳細はこちらから
https://www.rakuya.asia/event-details/jusu-1starubamu-sagaribana-shimawokuchizusamu-vol-1-ririsukinenraibu

●沖縄
日時:2022/10/2(日)14:30開場/15:00開演
場所・問い合わせ:那覇市・桜坂劇場(ホールB)TEL.098-860-9555
料金:前売3,500円/当日4,000円(高校生以下前売・当日共2,000円)※各1ドリンク別途
サポート:西仲美咲(fl)

ライブの詳細はこちらから
https://sakura-zaka.com/?event_info=221002jusu