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箆柄暦『七月の沖縄』2012 川畑アキラ

2012.07.04
  • インタビュー
箆柄暦『七月の沖縄』2012 川畑アキラ


箆柄暦『七月の沖縄』2012
2012年6月30日発行/111号

《Piratsuka Special》
川畑アキラ

《Piratsuka Topics》
いわきアリオス「琉球の音楽」
大工哲弘 DVD『愛さ生り島』
オリオンビアフェスト2012
オリオンミュージックフェスト
『本場 沖縄民謡決定盤』
よなは徹『RYUKYUSUCCESSION』
ナシル『君という名の未来へ/うつぐみ』
東風平高根『想歌〜ノスタルジア〜』

 

 
Piratsuka Special
川畑アキラ
沖縄で与論を思い、“誠の夢”を追い続ける。

 奄美群島の最南端、沖縄との県境に位置する与論島に生まれ育ち、上京後結成したロックバンド「ザ・コブラツイスターズ」で、一九九九年にメジャーデビューした川畑アキラ。バンドではボーカル&三線として活躍するも、二〇〇八年に「ここでやれることはすべてやりきった」とすっぱり解散、仕事と生活の環境をリセットすべく、単身沖縄に移住した。現在は那覇を拠点に全国を回り、シンガーソングライターとして活動する彼が、この五月、ソロ転向後初のアルバムとしてリリースしたのが『誠の夢』だ。

 本作には故郷の与論島をテーマにした楽曲が多数収録されており、彼の故郷を愛する思いと、故郷から離れた場所で夢と希望を追い続けようとする決意が、リアルに伝わる内容になっている。タイトルの「誠の夢」も、与論島に伝わる教訓歌のフレーズ「誠打ちじゃしょり(=自分の誠を打ち出しなさい)」からとったもの。彼はこのタイトルに、聴く人が本当に望む夢を手に入れられるように…との思いを込めたという。

「そもそも“誠の夢”は、人によって違うと思うんです。たとえば僕が与論島で暮らしていたら、畑を耕したり海に行ったりする日常に満足していたかもしれない。でも、僕は音楽をやりたくて島を出てしまったし、ミュージシャンとしての旅はまだまだ途中の段階。僕はこの先も理想と現実のギャップにもがきながら、自分の“誠の夢”を探して、歌を作り続けていくんだと思います」

 そんな“もがき続ける”人生の中でも、ソロになってからの四年間の経験は、川畑の歌に大きな影響を与えたようだ。その証拠に、先に開かれた那覇でのレコ発ライブは、実に見ごたえのある内容だった。少しハスキーで骨太な歌声に、力強く説得力のあるパフォーマンス、巧みなステージさばき。随所に漂う男っぽい色気が、観客をぐいぐいと川畑ワールドに引き込み、ときにしっとり、ときに熱く、会場のテンションを盛り上げてゆく。

 新譜の収録曲「朝日が昇る前に」や「黒いダイヤの涙」では、明治時代に与論島から三池炭坑へ仕事を求めて旅立った先輩達に思いを寄せ、「ティダ(=太陽)」「ウヮーチタバーリ(=いらっしゃい)」などのポップナンバーでは、リズミカルな歌唱で与論島の明るい太陽を感じさせる。

 また、沖縄と与論で離れ離れになった恋人同士を歌ったラブソング「辺戸岬」では、沖縄本土復帰四十周年というテーマもにじませつつ、切ない歌声を響かせた。そこには自らのルーツを尊重しつつ、独自の表現を追い求めようとする、アクティブなアーティストの姿があった。自身の歌で与論島の魅力を伝えること、それもまた川畑アキラにとっての“誠の夢”なのだろう。

「与論島は人も自然も素晴らしいし、文化も独特のものを持っている。全国で音楽活動を続けている今は、まだ島には帰れないけれど、これからも誇りを持って故郷をアピールしていきたいですね」。新作『誠の夢』を引っさげての全国ライブはまだまだ続く。彼が近くに訪れた際は、ぜひライブに足を運び、そのステージをナマで味わってほしい。
(取材・文/高橋久未子)

川畑アキラ(かわばた・あきら) 鹿児島県与論島出身。1999年、ロックバンド「ザ・コブラツイスターズ」のボーカルとしてメジャーデビュー。2008年にバンドを解散した後は沖縄に拠点を移し、ソロ活動を開始。趣味はマラソンで自称“シンガーソングランナー”。

◆川畑アキラ『誠の夢』
VAP VPCP-81736 2,000円 2012/5/23発売
朝日が昇る前に/黒いダイヤの涙/ティダ/ウヮーチタバーリ/辺戸岬/甦る人々/朝日が昇る前に(完全版)