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箆柄暦『六月の沖縄』2012 上間綾乃

2012.05.26
  • インタビュー
箆柄暦『六月の沖縄』2012 上間綾乃

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箆柄暦『六月の沖縄』
2012年5月31日発行/110号

《Piratsuka Special》
上間綾乃

《Piratsuka Topics》
川畑アキラ『誠の夢』
月・太陽・☆デビュー
新良幸人presents 第22回一合瓶ライブ
『沖縄コンビ唄 決定盤』
iPadアプリ『沖縄タイムマシーン』
喜納昌吉『Nirai Pana』
津波恒英『おきなわを唄う』
『うちなぁぐちラジオ体操』
『琉神マブヤーTHE MOVIE七つのマブイ』
『こどもたちへ贈る沖縄の歌』花/樹

 

 
Piratsuka Special
上間綾乃
沖縄の“思い”を唄い継ぐ。

 凛とした中に濃やかな情けをにじませる表現力豊かな唄声と、幼少からの鍛錬で磨き上げられた三線のテクニック。長い黒髪とエキゾチックな美貌から、才色兼備の若手民謡歌手として県内外で注目されてきた上間綾乃が、この五月、ついにメジャーデビューを果たした。沖縄民謡や自身のオリジナル曲を中心に、全十一曲を収録したデビューアルバムのタイトルは『唄者』。唄者は沖縄で「民謡を唄う人」の意味だが、このタイトルには「唄に込められた“思い”を次の世代に伝えたい」という、彼女自身の強い気持ちが込められている。

「沖縄民謡の世界で“唄者”と呼べるのは、民謡を型どおりに唄うだけではなく、唄に込められた“思い”もちゃんと受け継いで、次の世代へ伝えられる人だと思うんです。私も自分の師匠をはじめ、多くの素晴らしい“唄者”の先輩方から、民謡についてたくさんのことを教わりました。次は自分が伝える番になって、先輩方から吸収したことを次世代に残していかなければならない。それこそが“唄者”の役割だと思うし、私もそういう“唄者”になりたいと思っています」
 そのいっぽうで「次世代に伝えるべきなのは、昔からの民謡だけに限らない」とも、彼女は考えている。自身のオリジナル曲を生み出すことも、唄者の役割の一つなのだ、と。

「古い民謡も生まれた当初は新曲で、それが代々受け継がれるうちに“伝統”になったんですよね。だとしたら今を生きる私たちは、昔の民謡を唄い継ぐことはもちろんですが、自分自身の言葉で新しい唄を作ることも大事だと思うんです。もし私が新曲を作らなかったら、そのぶん今の時代の唄が減ってしまうかもしれない。だから私は昔からの民謡もオリジナル曲も、どちらも自分の唄として、大切に表現していきたい」

 そんな彼女の思いを反映したデビュー作には、民謡はもちろん、彼女自身が制作に関わったオリジナル曲や、名曲「悲しくてやりきれない」のウチナーグチカバーなど、多彩な楽曲が収録されている。レコーディングには、長年のライブパートナーであるギタリストの伊集タツヤに加えて、井上鑑、ショーロクラブ、妹尾武、藤原道山ら、日本の音楽シーンの第一線で活躍する実力派ミュージシャンも多数参加。彼らの奏でる上質なサウンドが、彼女の情感的な唄三線を引き立て、民謡や沖縄ポップスといったジャンルの枠を超えた、聞きごたえある作品に仕上げている。彼女自身「とてもいいアルバムができました」と、嬉しそうに語る。

「今回はCD制作に参加してくれたのが本当にいい人たちばかりで(笑)、私の希望を尊重してくれてとても嬉しかったし、その幸せな気持ちが唄にも表れていると思います。これからツアーで六都市を回りますが、今度はライブ会場に来てくれた方一人ひとりと、この嬉しい気持ちを共有していきたいです」

 沖縄の“思い”を唄い継ぐ者として、新たなスタート地点に立った上間綾乃。さらなる飛躍が楽しみな実力派の旅立ちである。
(取材・文/高橋久未子)

 
上間綾乃(うえま・あやの) 1985年うるま市生まれ。2006年に自ら作詞作曲を手がけた『願い星』、2009年に『まじゅん』をリリース。現在は沖縄を拠点に県内外でライブ活動を展開するほか、琉球國民謡協会教師として唄三線の指導にも取り組んでいる。

◆上間綾乃『唄者』
日本コロムビア COCB-53997
2,940円 2012/5/23発売
安里屋ユンタ/綾蝶/遠音/みちあかり/太陽月ぬ光〜アメイジング・グレイス/ハリクヤマク/悲しくてやりきれない/声なき命/イツクシミ/夢の国/夢しじく/声なき命(つらね入り)