箆柄暦『四月の沖縄』2012 大島保克
- 2012.04.15
- インタビュー

《Piratsuka Special》
大島保克
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Piratsuka Special
大島保克
後世に歌い継がれる“新しい島唄”を作りたい。
八重山諸島の中でも特に芸能が盛んな石垣島の白保地区で、「ひばり」と呼ばれる唄上手の家に生まれ、幼い頃から島唄や流行歌に親しんで育った唄者、大島保克。二十代半ばでデビューして以降は、八重山をはじめとした沖縄の島々の民謡と、三線で弾き語るオリジナル曲を歌い、本土を拠点に国内外でライブ活動を続けてきた。そんな彼がこの春、前作から五年ぶりに通算八枚目のアルバム『島渡る〜Across the Islands〜』をリリースする。
今回はギタリストの近藤研二とタッグを組み、全曲を大島のオリジナル作品で構成。彼がこれまで積極的に歌ってきた島々の民謡は、あえて収録しなかった。その理由を尋ねると、大島は「最近は島唄だけでなく、もっといろいろな音楽に取り組みたいと思えるようになったから」と答えてくれた。
「実はここ十年ほど、僕の中では“古い島唄をもっと勉強しなければ”という気持ちが強かったんです。自分の曲は“新しい島唄”のつもりで作っているけれど、そうであるためにはまず、昔からある島唄の“根っこの部分”、つまり“もともとどういう唄だったか”をきちんと知らなくてはならない。そう思ったので、機会を見つけては登川誠仁さんや知名定男さん、大城美佐子さんといった民謡界の先輩方に会いに行き、昔の唄の話はもちろん、三線の弾き方や曲の作り方についても教わりました。その中から多くのヒントをもらううち、次第に今までとは違うタイプの曲も作れるようになってきたんです。そこで今回は枠を決めず、いろいろなパターンの曲作りに挑戦してみようかな、と。結果としてポップな曲や早弾きの曲、昔の唄を蘇生するような民謡調の曲などが生まれ、従来の自分にはなかった面が出せたと思います」
かくして多彩な個性を持つ新曲を揃える一方、これまで多数のアーティストにカバーされてきた人気曲「イラヨイ月夜浜」や、HEATWAVE・山口洋との共演による「流星」など、代表曲の録音も新たに行った。その意味で、本作は“これまでの大島保克”の総括であり、かつ、次のステップへの出発点といえる。深く伸びやかな歌声からは、新作を生み出した喜びが伝わってくるが、同時に「後世に残る島唄を作っていきたい」という、大島の強い意志も感じさせる。
「沖縄本島では今も日々新しい島唄が生まれていますが、八重山や宮古はそういう動きがなく、あれほどの名曲を生み出してきた八重山民謡も、今では古い唄ばかりになってしまいました。これからは、僕らの世代が新しい島唄を作っていかなきゃならない。ただ、島唄は単に“作る”だけではダメで、それが後世に残らなければ意味がないんです。僕がいなくなった後も歌い継がれてこそ、初めて本物といえる。そのためにも、今後もたくさんの人に歌ってもらえる唄を作っていきたいですね」
不惑を迎え、唄者としてさらなる円熟期に突入した大島保克。その味わい深い楽曲と唄声をぜひ本アルバムで、そしてライブで堪能していただければと思う。
(取材&文・高橋久未子/撮影・喜瀬守昭)
大島保克(おおしま・やすかつ) 1969年、石垣島白保生まれ。高校卒業後上京し、1993年に1stアルバム『北風南風(にしかじはいかじ)』でデビュー。現在は東京を拠点に、国内はもとより海外でも多数のライブを行っている。高校時代の同級生であるBEGINや先輩の新良幸人とは、昔も今も良き仲間でありライバル同士。
◆大島保克『島渡る〜Across the Islands〜』
ビクターエンタテインメント VICL-63868
2,940円 2012/4/18発売
川/旅路/まつりのあと/来夏世/流星/マンタラ祝〜与那岡/波照間/島渡る/イラヨイ月夜浜/東方節/旅路(Instrumental)/与那岡