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箆柄暦『十一月の沖縄』2015 比屋定篤子&サトウユウ子

2015.11.01
  • インタビュー
箆柄暦『十一月の沖縄』2015 比屋定篤子&サトウユウ子

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箆柄暦『十一月の沖縄』2015
2015年11月1日発行/151号

マルチーズロック『ダウンタウンパレード』
BEGIN『Sugar Cane Cable Network』
DIAMANTES『カリエンテ』
「クリスマス音楽花火フェスティバル in 沖縄」
「沖縄コーポレートゲームズ」
那覇の街フェス!「Sakurazaka ASYLUM2016」
しゃかり『Life』発売記念ライブ@東京&沖縄
松田一利『うたしゃみ』
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大城貴幸『語いたや』
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《Piratsuka Special》
比屋定篤子×サトウユウ子

歌とピアノで奏でる、沖縄のわらべ歌。

 沖縄のわらべ歌や愛唱歌を、歌とピアノだけで奏でる。比屋定篤子とサトウユウ子による初のコラボアルバムは、そんなシンプルな試みから始まり、そして深く心に響く作品を生み出した。

 比屋定篤子は、ヴォサノヴァのスタンダードや自身のオリジナル曲を優しく撫でるようなボーカルで歌うシンガー。一方のサトウユウ子は、クラシック、ジャズ、ポップス、ブラジル音楽、八重山民謡など、多様な音楽を吸収しながら自身の音楽表現を追求してきたピアニストだ。そんな彼女達の出会いは、互いが馴染みにしていた那覇市内のバルだった。意気投合した二人は、二年ほど前からヴォサノヴァやポップスのスタンダードを中心としたライブを始める。そのステージは実にいきいきと魅力的で、両者が互いの歌と演奏を面白がり、音楽的な価値観を共有していることが伝わってくるものだった。

 だから今回二人がアルバムを制作したと聞き、てっきりその路線かと思いきや、意外にも全曲、沖縄のわらべ歌や愛唱歌だと聞いて驚いた。タイトルは『RYUKYU STANDARD』。元々はレーベルから比屋定への「沖縄の歌を歌ってみませんか」という声掛けがきっかけだったそうだが、当初、比屋定は「自分にできるのかな?」と不安に思ったという。
 「私はポップスの歌い手で、民謡を習ったこともないし、民謡の歌い方はわからないから。でも実は小学生の頃、合唱団でこういう歌をたくさん歌っていたことを思い出したんです。私の奥底には、沖縄の歌が大事なものとしてずっと存在していたんだと気づいた。じゃあ今、自分の歌い方で歌ってみるのも面白いかもしれない。サトユウのピアノと一緒だったら、完成形がイメージできると思いました」

 それを受けたサトウは、「あっちゃんだからこそ、沖縄の歌の魅力を伝えられると思った」と語る。「沖縄の歌には面白いメロディや素敵な歌詞がたくさんあるけど、三線の音や民謡のコブシが入ると、どうしても民族音楽的な評価が先に立ってしまう。でもポップスシンガーの彼女なら、言葉やメロディが持つ普遍的な美しさを一番よく伝えられる。そもそも沖縄の民謡も、言ってみれば昔からみんなが口ずさんできたスタンダードナンバー。その歌にいろんな音楽の要素を取り入れてアレンジするのは、私が以前からやりたかったことだし、ぜひ二人でやろうと。最終的には二人とも民謡だとか意識せずに、自分たちにできる最良の音楽を追求していきました」

 完成したアルバムに耳を傾けると、サトウの自由に駆け回るピアノの音に乗って、比屋定の倍音を含むふくよかな歌声が踊り、まるで二人の女の子が無心に遊んでいるかのような印象を受ける。そこには「歌と伴奏」という関係ではなく、一緒に音を出し、作品を作り上げる喜びが溢れていた。比屋定も嬉しげに語る。「自分でもすごく愛着がわいています。〝聞いてね、沖縄の歌だよ〟って、自信を持って言える作品になりました」

 沖縄のわらべ歌をピアノで歌った作品は、もちろんこれが初めてではない。だが、こんなにも心躍り、郷愁を誘われる作品があっただろうか。沖縄の歌が好きな人のみならず、より幅広い層の心にも深く響くことだろう。(取材&原稿・萩野一政/撮影・喜瀬守昭)

 

比屋定篤子(ひやじょう・あつこ、写真右):那覇市出身のシンガー。美術大学入学を機に上京し、東京で音楽活動を開始。1997年にメジャーデビューし、2001年に結婚・出産を機に帰郷。現在は那覇を拠点に、全国でマイペースにライブ活動を行っている。

サトウユウ子(さとう・ゆうこ、写真左):福岡県出身、那覇在住のピアニスト。県内のライブハウスを中心に演奏活動を行うほか、沖縄のアーティストとの共演も多数。2011年には八重山出身の唄者・新良幸人と共作でアルバム『浄夜』を発表、高い評価を得た。

 

比屋定篤子×サトウユウ子
『RYUKYU STANDARD』

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